いまここに、あるもので

労働から活動へ、消費から生産へ、利益から恩恵へ

非倫理的である以上に「長期的に誰も得してない」ことが問題。映画『トゥルー・コスト』

 

12月15日(火)に横浜美術館のレクチャーホールで開催された

『トゥルー・コスト ファストファッション 真の代償』の上映会に行ってきた。

 

有志の方が企画して下さり、ドネーション(寄付)スタイルで参加することが出来た。

 

この作品も上映会のことも、知人のFBを介して知った。

 

ファストフードをもじったファッションファッションのシステムが、

発展途上国と先進国双方にどれだけ有害な結果をもたらすかを取材し、

それに対抗するムーブメントと共に記録したドキュメンタリーだ。

 

カナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインNaomi Kleinの本

『No Logo ブランドなんか要らない』も、

Sweat Shop(搾取工場)やグローバル企業のマーケティングについて書かれていたが、映像で見るのは記述以上に衝撃的だった。

 

ブランドなんか、いらない―搾取で巨大化する大企業の非情

ブランドなんか、いらない―搾取で巨大化する大企業の非情

 

マイケル・ムーアMichael Mooreのドキュメンタリのように、

監督の意図やキャラクターが前面に出ることもないので、見やすいと思う。

内容は、予備知識の無い人には相当に衝撃的だろう。

 

  • ネタバレあり、でも内容を知っても見に行く価値あり。むしろ行きたくなるかも。

 

監督は若いアメリカ人男性。

以前は「洋服に関して値段以外気にしたことがなかった」。

 

2013年にバングラディッシュのダッカで縫製工場の入ったビルが崩壊し、

1000人以上の労働者が犠牲になる。(生き埋めになった人も多いとか・・。)

安全性の低い建物の中で、窓や換気もほとんどなく、一日中働きづめだった労働者。

彼らは日給3ドル程度で働いていたとのこと。

 

その事故をきっかけに監督の取材と制作が始まる。

 

ファストファッションを支える労働者のほとんどは、発展途上国の最貧民で、

前述した犠牲者と同じく、劣悪な労働環境の中一日数ドルの報酬のために労働する。

 

そして更に価格を叩かれるという。

先進国での価格競争によってとばっちりを受けるのだ。

商品が値下げされると彼らの給与も値下げされる。

 

組合を組織し賃上げ要求をした女性達は、

マネージメントから組織的に殴る蹴るの暴行を受け、泣き寝入りせざるを得なくなる。

 

地域の環境にも大きく影響している。

主に革製品の製作工程で使用される化学薬品は、

そのまま近隣の川に垂れ流しされ、地元の人々に病気や障害をもたらす。

 

原料となるコットンの種はグローバル企業が品種改良したもので、

非常に高額だが、1代しか育たないため、購入を続けなければならない。

更に農薬(ベトナム戦争で使用された枯葉剤と同じもの)も購入して一緒に使う必要があり、

農家にとっては出費がかさむ。

破産した農家がその農薬を飲んで自殺する、という皮肉な結末が、

インドでは毎年何件も起きているのだそうだ。

 

生産を押し付けられている発展途上国の人々だけが害を被っているわけではない。

 

季節ごとではなく、週ごとに変わるファストファッションのラインナップ。

クリスマスやバレンタイン、ブラックフライデーなど、

あらゆるイベントが消費に結び付けられて宣伝される。

 

先進国の人々、特に若者はモノ中毒になりつつある。

 

しかしモノを欲しがりモノにこだわる物質主義者ほど、

権威やブランドに弱く幸福感が低い、ことが学術的に証明されているという。

 

そして、近年ファッションの値段は急降下しているが、

反対に学費や保険料など、生活に必要なものの値段は高騰している。

(日本でも同じことが起きていると感じた)

 

ファストファッションは目くらましのために機能しているかのようだ。

 

更に、使い捨てされるファストファッションの洋服は、

寄付という名目で発展途上国へ大量に流れるが、そのほとんどが廃棄に回る。

化学物質を含んだ大量の服は山積みにされた後、埋められるが、

土に分解されずに何百年も残り続ける。

 

  • ピーポル・トゥリーPeople Treeという挑戦

 

以前カンブリア宮殿に社長のサフィアさんが出演していたし、知名度は充分もうあるだろう。

 

流行やファブリックよりも、

製作工程の正当性を重要視したファッション、がそのコンセプト。

とは言っても充分ファッショナブルなデザインだし、

値段もそこまで高額ではない。

 

http://www.peopletree.co.jp/index.html

 

※セール商品はかなりお得だと思う。素材も良さそうだし。

サフィアさんが劇中に着ていた背中が開いたドレスが、

健康的でセクシーな彼女に似合っていてとても美しかった。

 

そして! 社長さんなのに自らカメラを持ち、移動は公共の電車やバス。

格好いい女性だな。

 

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本人もお洒落! 知的で健康的なところも素敵だ。

 

普段私は、リサイクルショップにしか行かないが、

素材的にも経済的にもクオリティの高いものを、

季節ごとに少量購入する、というスタイルにシフトしたいと感じた。

 

ピーポル・トゥリーの商品なら着ていて気持ち良さそうだし、

大事に扱うことが出来そうだ。

 

  • 中村のんさんが語った興味深いファッションの歴史

 

上映会の後、中村のんさんというスタイリストのトークがあった。

 

70年代後半から30年近く「女性の欲望の一番近くにいた」(この表現上手い)

と仰る中村さんの仕事は「いかに欲望をくすぐるか」だったという。

 

ご本人は落ち着いた成熟した女性という印象で、

冷静にそうした状況に対処していたのだろうと感じた。

 

当日中村さんは20代の頃に購入したというフランス製(Made in France)の

黒いマントを着ていた。

これが個性的なのにシックでとても素敵だった。

かなり高額だったが数十年も着られているので、結果的にとてもリーズナブルだとのこと。

最もだ。

 

彼女が実際に目にしてきたファッションの歴史を簡単に語ってくれたのだが、

これがとても興味深かった。

 

まず、中村さんの青春時代(70年代)と現代のマーケティングの比較。

70年代は「その商品の質の良さ」がその肝だったが現在は「他社との比較」になっている。

 

そしてファッションそのものの歴史。

1960年代 プレタポルテ(既製服)の登場。

     サンローランなどのハイブランドが手軽に買えるということで人気を博す。

     それ以前ブランドは全て上流階級のものだったのだ。

     庶民は量販店か洋裁店に行くほかなかった。

 

1970年代 anan創刊、75年にはパルコが、78年にはラフォーレ原宿が開店。

      ファッションの主役が若者になった。

 

1980年代 ブランドブームが起きる。

      バブルとも相まってファッショナブルであることが当然になっていく。

      この頃から強迫観念的に、ファッションが原因の病みが現れる。

 

1990年代 ※ここは私の意見※ ファッションが低年齢化。 

      ハイブランドに執着する若者が現れ、

      生活や性を犠牲にしてもそれを手に入れようとする者も。

 

そしてその後ファストファッションが出現する。

1999年 GAP1号店

2000年 ユニクロ

2003年 ZARAが拡大していく

2008年前後 H&M Forever21が日本に出店を重ねる

 

中村さんは、ファッションの歴史を踏まえ、ファストファッションを次のように分析する。

「不況でお金は無いが、欲望だけが残っている人々の救世主のような存在」だと。

 

また自身の体験でとても驚かれたことを挙げていた。

 

ファストファッションのプレス(PR)と仕事で一緒になるそうだ。

彼ら(彼女達)はほとんどがバイリンガル(以上)で、

他業界からヘッドハンティングされた人も多く、優秀でやり手の女性ばかりだという。

今までのファッション業界には居なかったタイプの人だとも言っていた。

 

しかし彼らはプレスであるにも関わらず、

次のコレクションやデザインを全く知らないのだという。

 

既存のファッションブランドは、

4シーズンごとにコレクションを発表し、次のモデルやコレクションをプレスが把握している。

 

ファストファッションは、

週ごとに企画・デザイン・制作をしており、プレスでさえ先が分からないという。

 

ハイブランドのコレクションをスマフォで撮影し、次の瞬間企画部へ画像が流れ、

すぐに製作現場に指示が入る、というオンタイムなシステムが確立されている。

 

製作・流通システムが劇的に変わってしまっているのだ。

 

 

映画を見れば、全世界が皆で一緒に損している現況がすぐにイメージ出来ると思う。

 

それでも安い服が買いたいしそれはいいことだ、という人がいるかも知れない。

でもそんな状況はそんなに長く続かないと思う。

 

ユニクロがフリースを2000円で売って大ヒットしたのはたかだか10数年前。

今同じものが発売されても大ヒットにはならないだろう。

同等かそれ以上の品質とデザインで低価格の商品が溢れているからだ。

 

日本も、他国も状況はこれからも劇的に変化し、

そんなに長く低価格・供給過剰の恩恵を受け続けることは出来ないだろう。

 

じゃあどうしたらという解決策だが、

「状況は刻一刻と変化するので、丁寧に選択し生活することを心がける」しかないと思う。

 

ファストファッションは出来るだけ避けてきたが、

これを機会に古着以外は買わないことになりそうだ。

 

服は消耗品のように買うべきではない。

実際消耗品ではないのだから。

 

●おまけ 沢山の男性にも見て欲しい

 

平日ということもあり、参加者はほとんどが女性。

私も友人も平日に休みを取れるので参加できたが、

一般企業に勤務する男性が参加するのは難しいだろう。

 

有給使ってお休みして、こういうイベントに参加する。

それがもっと気軽に出来たらいいのに。