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スローに働いて、スローに遣う

労働から活動へ、消費から生産へ、利益から恩恵へ

男性受難の時代 その6 父権をアイデンティティにするのは危険

勝手にシリーズ化していますが、アクセス数を見るとこのテーマ人気なのでしょうか。

 

田中俊之さんという学者さんと『男性学』が注目されているようです。

 


フェミニズム女性学)よりも、彼の意見の方が共感を覚えます。

もしかしたら、女性よりも男性を解放する方が重要なのかも知れません。

それは父権からの解放です。

 

ファイトクラブ』という20世紀ハリウッドの名作があります。

私が定期的に鑑賞してしまう作品の一つです。

 

ダメサラリーマンだった主人公が、謎の男タイラー・ダーデンと出会い、

男としての野生を取り戻していく物語です。

タイラーは、自由でワイルド、カリスマ性があり抜け目無く、体力・精力共に抜群です。

つまり主人公と正反対の完璧な男として描かれます。

 

<ネタバレあり! 未見の人は見ない方がいいかも>

しかし、タイラーとは主人公の別人格(Alter Egoオルターエゴ)に過ぎなかったんです。

もう一人の自分が愛する女性と世界を危険に晒そうとしていることに気づいた主人公は、彼を銃で撃ちます。つまり、自分自身を撃つんです。

 

ファイトクラブ』は消費主義、資本主義社会へのアンチテーゼと見なされます。

でもそれ以上に父権社会へのアンチテーゼです。

 

消費主義からの解放だけでなく、タイラー(理想の男)から解放されること。

それが本当のテーマだと私は思っています。以下以前にも記しました。

 

 


更に『ファイトクラブ』が画期的なところは神話を塗りかえているところです。

 

「父殺し」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

息子が父を殺すという、神話の型(スタイル)です。

 

偉大な父を倒して、偉大な父を超える。

スター・ウォーズ』がそのいい例です。男性陣に人気ありますよね。

ヒーローものや冒険者はそのパターンにあてはまるものが多いでしょう。

 

ファイトクラブ』の主人公は母子家庭で育っており、偉大な父親がいません。

代わりにそのイメージを胸の裡に持っています。

 

ジェネレーションX(1970年前後)世代ですから、広告やメディアからイメージを与えられます。

若き日のクリント・イーストウッド(『ダーティハリー』は私の父も大好きでした笑)のような、自由でワイルドな男のイメージが幼い彼らの脳裏に焼きつきます。

 

何度も何度も。

 

その完成形の一つがタイラー・ダーデンなのです。

主人公は、映画のラストでタイラーを倒すわけではありません。

タイラーは彼の中にあるイメージに過ぎないから。

 

そのイメージを消滅させ、そこから解放されるのです。

やっと平安が訪れます。本当の自分自身で愛するマーラと対峙します。

 

しかし二人がいるビルは爆発してしまう。

クレジット(債務)の履歴を全部消して、消費主義を滅亡させるためだけではない。

タイラーは主人公のアイデンティティ、最後の支えでもあるのです。

 

強く偉大な父になることから解放されても、他の生きかたが分からない。

だから愛する人と共に吹っ飛ぶことを選択した。

と私は解釈しています。

 

私の周囲にいる男性は、年下(80年代生まれ以降)と年上(70年代生まれ以前)で、

生きかたも考え方も全く違います。

 

80年代以降は大分楽そうです。

奥さんや彼女が年上で、双子のように付き合っている男性は特に楽そう。

恰好も気にしないし、料理も好き。

 

70年代以前生まれは何だか辛そうです。

どうしていいのか分からない、という人も多いのではないかと思います。

稼ぐ=男の甲斐性という発想の人が多く、癒されたい願望が強い。

(癒されるのは、帰属する共同体から独立しないためだと思います)

年齢や肩書きが気になり、女性というだけで優しくしてくれたりする。

 

後者の人達がまさに「結婚して男としての責任を全うする」タイプなのですが、

その価値観をいつまで持ち続け、息子に手渡すのだろうかと勝手に心配しています。

 

父権は消費社会に利用されているからです。

稼げないと男じゃない。

一国一城(もうギャクとしか思えないですよ)の主になるために不動産を購入しなければならない。

家族4人以上乗れる車を購入しなければならない。

子供二人を大学まで出す教育費を稼がなければならない。

家族全員を食わせ続けなければならない。

 

男性として産まれるだけで、父権を成立させるためだけで、億単位稼がなきゃならないんですよ!!

キラキラ女子だの美魔女だのってせいぜい数百万でしょ、美容費。

ケタが違うんです。

 

更に田中俊之さんが言うように、イクメン&家事もしなきゃいけないなんて!

ロボットになった方がいいくらいです。

 

70年代以前生まれの男性が結婚するときに問題なのが、相手の私達女性もほとんどが、

父権信仰(養ってもらうこと前提)が強いことです。

「男は働いてもらわないと」

「男でフリーターはやっぱきついよね」

私の周囲の比較的リベラルな女性もぽろっとそういうことを言います。

 

70年代男子はきついと思います。

でも周囲に流されて父権をアイデンティティに設定してしまうと、これからもっときつくなると思います。

 

どうしたらいいのか全く分からないんですけれども。

違和感や辛さを感じたときは、それが文化的現象であり個人のせいではないことを思い出すといいと思います。

(誰も相談していませんが)

 

父権のイメージで得してるのは、ワンボックスカーを売る自動車会社、マイホームを売る不動産業界、キャンプ用品の会社、後は結婚式とか成人式周りの業界でしょうね。

彼等は父権が消滅すると大きな市場を失うので、可能な限りイメージを存続させようとするでしょう。