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スローに働いて、スローに遣う

労働から活動へ、消費から生産へ、利益から恩恵へ

孤独と向き合える大人の男女は美しい 映画『恍惚』

映画

30代半ばを過ぎて心奪われた女優がこの二人。

御歳65歳くらいだろか。

 

ランプリング様

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ファニー・アルダン

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無言の上目遣いで見つめられると、二人とも同性ながらどきりとします。

口元も目元もほとんど動かないのに、饒舌。

存在感がありながら、今にも消えそうな儚さがある。

 

女優としても女性としても美しい。

そして、よい女優とはファッション・アイコンにならない気がします。

アイコンになるのはミュージシャンや画家などのアーティスト。

何にでもなれそうで何ににもならない浮遊感と透明感が、よい女優の条件かも知れない。

サマンサ・モートンもこのタイプです。

 

  • 2003年 フランス映画『恍惚(原題:ナタリー)

 

 

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<あらすじ>

浮気した夫に復讐するため、娼婦(エマニュアル・ベアール)を雇って彼を誘惑させる妻(ファニー・アルダン)。しかし娼婦から赤裸々でえげつない経緯を伝えられ、動揺し嫉妬に苦しめられることに。

 

当初はベアールの桃のような肌と唇に輝きを感じるのですが、

途中からアルダンの落ち着いた艶やかさに心奪われていきます。

 

姿勢が美しいことって大事だとつくづく感じました。

そしてゆっくりと丁寧に話すこと。

それだけで美しさは10割増し。習慣は大事。

 

あとは、大人の女が着るシャツとジャケットのかっこいいこと!

モノトーンで飾りもないのに、事務員化しない。

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パティ・スミスのシャツとジャケットもかっこいい。

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そして煙草。

普段吸わないのに、ナタリー(娼婦が夫に名乗る名前)の話を聞くときには吸ってしまう。

毒が必要なときに、意識的に吸うんです。

これが大人の吸い方。

美味しそうで禁煙したのにまた吸いたくなってしまいます。

金髪プリン、ディズニーのケースのスマフォ、コンビニ前、缶コーヒーの4点セットで吸っているのと訳が違います。(横須賀そういう人多いな。。)

 

  • 無意識から産まれる可愛らしさ

ナタリーの口から最もグロテスクな告白がされた後、アルダン演じる妻はひどく動揺します。

そして成り行きで、大分年下の軽薄そうな、かっこいいバーテンダーと浮気する。

 

車に乗って彼の家にいくところから、次の日にナタリーに打ち明けるまで、

この場面最高です。

 

まず車の中で聞くのがジョイ・ディビジョンですからね!

音楽の趣味がいい男はそれだけで恰好いいです。

 

彼のアパートの階段に着くと、急に不安に襲われる。

「やっぱり帰るわ」

でも

「階段でヤリたい」

と抱きしめられて陥落。

このへんの流れ、監督(女性)のドキュメンタリーなのかと勘ぐるくらいリアルです。

 

次の日、駅でコーヒーを飲んでナタリーに会いに行く。

「浮気したの」

と報告するために。

「可愛い男よ、野生的で」

 

このときのファニー・アルダンは凄いです。

円熟した女性の凄みと脆さと底に秘める可愛らしさが伝わります。

大人の女性の可愛いさってこういうものなんだと思います。

 

それは無意識に、無作為に放出されるもの。

幼稚園児が無邪気に「魔法を使いたい」と言うときも無作為です。

日本の美魔女と呼ばれるおばさん達が、完全に見当違いなことが分かります。

可愛らしさは本人が気づかない部分から産まれるんです。

 

18歳の時、私は自分の肌や髪が美しいことに気づいていなかった。

どの18歳の女の子もそうでしょうね。

 

  • 嫉妬していたのは妻だけではない

妻は夫とナタリーの情事に嫉妬していたのですが、

ナタリーも実は妻に嫉妬しています。

 

妻(アルダン)の若い頃の写真を見てナタリーは言います。

「今の方がいい」と。

 

若さだけでは手に入らない美しさ。知性、思慮、優雅さ、優しさ。

そういうものを妻が持っていることをナタリーは感じていたのでしょう。

ナタリーの嫉妬がドラマを展開させます。

 

  • 孤独と向き合える大人の男女は美しい

すっかりお騒がせ有名人になった高樹沙耶さんが女優を辞めた理由をこう言っており、私は好感を持ちました。

「日本には、大人が見て楽しめるラブストーリーや映画がないから、女優に未練が無い」

 

『恍惚』のような、大人の急所をつつく映画が日本にはありません。

俳優、ロケ地、脚本、監督、どれのせいでもないでしょう。

 

孤独と向き合える大人の男女は美しいという前提が無いのだと思います。

恋人や友人、配偶者や家族がいても孤独は存在するというのは当たり前の事実です。

私が知る限り、日本のドラマやポップスはそれを隠遁しているように思えます。

 

映画監督の西川美和はその前提に近いところで作品を作っているように感じますが、孤独を肯定まではしていないと思います。

 

  • 安定しないが不安にならない

最後にナタリーは妻を怒らせそうなある告白をします。

でも彼女は怒らない。

 

自分で蒔いた種だから怒らない。

どんな相手でも完璧ではなく、感情で動く生き物だと知っているから怒らない。

やはり大人だなと思います。

 

夫婦は別れることなく続いていきますが、完全なハッピーエンドとは限りません。

このまま死ぬまで寄り添う保証はどこにもない。

 

どんな人間関係も安定しているものはない。

でもそこに不安を感じる必要はない。

 

こういう映画を見ると、結婚してみたくなります。

何十年も生活を共にするとどういう感慨が生まれるのだろうと興味が湧きます。